「コシラエル」の2つの絵柄の布が
お洋服になりました。
美しくて、身につけて心地のいい
服のこと、「色」を纏うということを、
ヒガシチカさんとスズキタカユキさん、
おふたりからお話を聞きました。
text naoko tsutsumi
photo yayoi arimoto
自然体だけど強い。すでにイメージは湧いていた。
—— お二人で服を作るきっかけは何だったんですか?
(ヒガシ)
2022年8月28日に12年間続けてきた「コシラエル」を
閉店することが決まった時、最後に何をしたいかを
お店のスタッフにたずねたことがありました。
すると、みんな声を揃えて、
「スズキさんとのお洋服を作ってほしい!」って。
スズキさんがお忙しい方なので、そんなことが叶うのか、
色柄のある服を作られることに、
抵抗があるのではないかなど気掛かりだったのですが、
断られる覚悟で、思い切ってご連絡したんです。
すると「いいですよ」と快諾いただき、
心が躍りました。
—お話が来て、どんな風にイメージしたのですか?
(スズキ)
「モクレンの花を逆さにしたような感じ」。
このイメージは、作品や画集を見たわけではなく、
チカちゃんを見て自然に浮かんできました。
せっかくコシラエルの最後に作るということなので、
チカちゃんという「人」をカタチに表せると
面白いかなと思って。
チカちゃんは、自然体だけど強い。
存在感はあるのだけれど、柔らかさと繊細さがあり、
ちょっと毒気というかクセもある(笑)。
それが何だろうと考えて、思い浮かんできたのが、
モクレンやコブシのような花でした。
僕は、これらの花が好きなんです。
ボリュームのある形状が特殊じゃない?
いい意味での“歪み”があって、独自性がある。
それが、僕の中でのチカちゃんのイメージでした。
(ヒガシ)
ありがとうございます(笑)。
そのお話聞いて、すぐに描き下ろしたのが、
ピンクの絵柄、花の方を指す、
モクレン(magnolia)です。
(スズキ)
チカちゃんといえば、
やはり色のイメージがありますね。
モクレンの中に淡いピンクがふわっとランダムに、
チカちゃんの世界観に入っているというのが
いいなと思って提案させてもらいました。
photo masahiro arimoto
「色」にはものすごくエネルギーがある。
僕の作る洋服には、ほぼ色がありません。
それは、素材の「質感」に興味があるからなのですが、
たくさんの色があることに、憧れはありました。
——憧れがあったとは意外です!
「色」にはすごくエネルギーがあります。
脳は、最初に色を認識すると聞いたこともあります。
強いからこそ
イメージがついてしまう怖さがありました。
——最近のコレクションには色がありますよね。
シーズンごとに1〜2色ぐらい出すようになりました。
ただ、色幅を持たせるようにしています。
例えば、黄にも様々な色があるので、
その中から自分に合う黄色を見つけてくれたらなって。
「人が着て完成する」という服作りのスタンスは
これまでと変わりはありません。
(ヒガシ)
だからこそ、私でよかったのかなって……。
(スズキ)
チカちゃんのはいろんな色があってすごいなって。
僕が色に関して引き気味のスタンスだったので、
色を扱う人は、尊敬しているんです。
以前、コシラエルを訪れた時、
色に溢れるお店の中でお客さんたちが
おのおの好きな色や柄を選んでいる姿を見て、
これもアリだなと思ったことを覚えています。
僕とは逆の発想。それがとても面白かったんです。