Coci la elle × suzuki takayuki -花と砂- part.2


なりたい自分になれる傘。

 

 

(ヒガシ)
人にどう見られるかもあるけれど、
傘は見上げて、さしている自分も見ることができます。
体と少し距離感があるので、
お洋服とは性質の違いがあるかもしれませんね。

(スズキ)
なるほど。それは面白い。

(ヒガシ)
心理的に
「時計は自分のなりたい女性像を表している」と
聞いたことがあるのですが、
傘と似たところがあると思いました。

お店でお客さんを見ていると、
最後の二択で悩む方が結構多かったんです。
大人っぽいのと可愛い系。タイプが正反対。

そういう時には、
「10年後にどちらを持っていたいですか?」と
お声をかけていていました。

なりたい自分を表せるのも、傘の面白さかなって。

 

——男性も似合いそうですね。

 

(スズキ)
そうなんです。男の人にピンクが合うんです。
だから、今回のコレクションには、
メンズサイズも作りました。

(ヒガシ)
性差による色のイメージはまだありますが、
ピンクが似合うのは男の人だと、私も思うんです。
だって、スズキさんのように繊細な方が多いんですもん。

女の人は気性の強さをカモフラージュするために
ピンクを着ているのかもしれませんよ。

——願望の表れ!

(ヒガシ)
実際、ピンクは女の人が求めている色かもしれません。
子どもたちに大声を張り上げた後、
もっと優しくなれますように……と、
私の日常での“あるある”です(笑)

(スズキ)
色は、気持ちに作用するものです。
一人ひとりが心地いい色を見つけてほしいです。

 

photo masahiro arimoto

 

 

 

ニュートラルになれる不思議なお洋服。

 

 

(ヒガシ)
冒険もいいけれど、落ち着くことも大事ですよね。

スズキさんのお洋服は、
素の自分を出したい時、取り戻したい時。
リラックスして家のことをやりたいけれど、
好きな服を着たい気分にピッタリなんです。

人に会うわけじゃないし、家族がいるだけなので、
「どう見せたいか」ではなく、「自分を守る」ため。

気持ちを上げたり落ち着かせたり、
ニュートラルになれる不思議さがあると思います。

 

——着心地の良さも魅力の一つですね。

 

(ヒガシ)
はい。歳を重ねるにつれて、服を買う時、
「素材のよさ」を大切にするようになりました。
着ているか着ていないかわからない、
スズキさんの服ってすごいですよね。

(スズキ)
作っている本人が言うのも何なんですが、
こんなに軽い服で大丈夫なのかと不安になります(笑)

(ヒガシ)
軽いのに生地をたっぷり使っているが本当にすごい。

(スズキ)
体との対話なので、重さが必要なときもありますが、
今回、チカちゃんの描いた布を使うにあたっては、
生地の量だけでなく、どのくらい柄を載せるかを
考えるのが面白かったですね。

(ヒガシ)
傘の場合はポリエステルを使っていたので、
柄や色ははっきり、くっきり。ばっちり。
雨が漏れないように密な織り目で、
破れにくくする必要がありました。

しかし、スズキさんのお洋服といえば
美しいギャザーが特徴的なので薄い生地になって、
引き延ばされたり、重ねられたり……。

私の絵はどうなってもいい!というくらい、
楽しみにしていました。

(スズキ)
袖を通すと、ヒダが寄ったり、動いたり。
布が移ろう様子が楽しい洋服になりました。

(ヒガシ)
透け感のあるコットンシルク素材は、
肌の色に光と陰が重なって、
着ることで魅力を増すような気がします。

作為なく、自然に形が生まれる瞬間は美しいです。

 

 

普段が少し面白くなるといいな。

 

 

——新作とともに、既存の「砂」を選ばれたのはなぜ?

 

(スズキ)
これまで傘をほとんど使わない生活だったので、
僕は傘を持っていませんでした。
それでもお店を訪れた時にほしいなって思ったんです。

けれども、柄モノを持たないし……

さて、どうしようと真剣に考えた末に選んだのが、
この「砂」(Sable)でした。

押し付けがましいわけじゃないけれど存在感のある
柄のバランスに惹かれました。
第一印象は、人との距離感が素敵だなって。
今でもすごくいい距離感でいてくれています。

(ヒガシ)
今回、服にするにあたり、
オリジナルから色調を変えてくれたんですよね。

これまで様々なSableを見てきたスタッフのみんなが、
「このSableはすごく着やすい!」と言っていました。

(スズキ)
少しだけ「間」を作ってみました。

 

photo masahiro arimoto

 

 

——それは、傘と洋服の違いを考えて?

 

(スズキ)
はい。洋服は人との関係性が直接的になるので、
ちょっとした印象で変わるだろうなと。

「服」だけで出来上がりすぎている服は、
実は、着るとハマりづらいことがよくあります。

微妙に何か足りない?くらいのほうが、
袖を通した時にしっくりくるものがある。
だから生地の時に色調を変えて、
少しだけ余白を作ることにしたのです。

——隙のある服。選んだ服の型とも関係しますか?

(スズキ)
型だけでなく、布の分量もひっくるめて
服のエネルギーが決まるので一概には言えませんが、
今回選んだ6つのアイテムは、
比較的フラットなものになります。

1枚で迫力のあるものを作るのも面白そうだと
最後まで迷っていたのですが、
最初にチカちゃんから感じ取ったイメージを
自然に落とし込めるアイテムを自分なりに選びました。

みんなの日常に込めて、
ふとした時に、
「あ、コシラエルだ」と感じられるような。
自然な状態を作れるように意識しました。

 

——なんだか心強く見えてきました。

 

(スズキ)
そうなんです。
洋服にチカちゃんの絵という要素が加わることで、
そのエネルギーが乗っかって、
いつもより少し優しくなったり、元気になったり。

普段が少し面白くなると、いいですよね。

(ヒガシ)
12年頑張ってきたご褒美のような、
宝物のようなお洋服が出来上がりました。
ありがとうございます。発売は来年の春です!

 

photo yayoi arimoto

text  naoko tsutsumi

利用可能カード