message – 【2024 spring-summer collection “the flowering meadow”】







the flowering meadow




お花畑というものを見たことが 何回あっただろうか


記憶を辿ると

小さい頃に遊んでいた タンポポやすみれ 白詰草の花が咲いていた

近所の空き地を思い出すことくらい


他には 祖母の趣味で連れて行かれた 紫陽花やチューリップの花園か、、、



北の土地に 通うようになってから

自然のお花畑というものが存在するということを 始めて知った気がする


もちろん想像していなかった訳ではないが

実際に見ると それは 思いのほか衝撃的だった


そこは緯度が高く 春夏の短い 特殊な土地だからだろうが

雪がとけ 暖かくなってくると 一斉に花々が咲き乱れる



自分たちの存在を 必死に主張しているかのように

それぞれが 個性的で 魅力的な姿を 見せてくれる


この土地に来るまで 周りに生えている植物たちに

特別興味を持つことなんて あまり無かった

いくつか 偶然に名前を知ったものに ほんの少しだけ目を留めるくらい



ただ ここに来て 愛らしい植物たちに出会うことができて


今まで 草花という大きな枠でしか捉えてこなかったものたちを

一つ一つに名前のある 一つ一つの興味深い存在として 少しずつ認識出来ていくことを

嬉しく感じている


そして 彼らは元々そこにいたものたちで

ただ私が認識出来ていなかっただけなのだということに

少し反省を




世の中は 素晴らしいものに溢れている






suzuki takayuki



今回のタイトルは、〝 the flowering meadow 〟です。
花咲く草原、人の手の入っていない花が咲き乱れる原生草原をイメージしています。

北海道に通うようになってから、
植物を強く意識するようになった気がします。

緯度が高い 比較的寒い地域なので、
高山植物などの特徴的で面白い形状のものたちが多く、
道端に生える草花たちでも、どことなく可愛らしく、

知らず知らずのうちに魅了されていたのかもしれません。

私が最も好きな場所の一つに 海まで続く広大な草原があります。

半島の東側に面したその土地は、クロウベリーの群生地もあり、
海岸線の岩場には海藻がびっしりと生える、
とても豊かな場所で、季節ごとに魅力的な姿を見せてくれます。

6月から7月にかけて、その草原は一面のお花畑に姿を変えます。

ピンクや紫 白や黄色と様々な色の花々が咲き乱れ、幻想的な風景が突然現れます。
短い夏の間に子孫を残すため、懸命に自分たちの存在を主張する姿に、何故か心打たれます。

そんな魅力的な植物たちの姿に触れるうち
少しずつですが 植物たちの名前を覚えるようになってきました。

そうすると、その花が咲いている草原という場所は ざっくりとした曖昧なイメージのものから、

チシマアザミやネムロシオガマ、ハクサンチドリなど、
たくさんの一つ一つの魅力的な草花たちが集まってできた“花咲く草原”へと、
自分の中で、少しずつ認識が変わって来たのです。

その変化が、自分にとってはとても面白く嬉しいものでした。

物事を一つ一つ認識し、改めて意識していくことで、
今まで自分が見ていたものが、また新しい別のものへと変わっていく。

そこに新たな発見や気づきがあり、
当たり前だと思っていたものの中に、また魅力的な姿を見出していく。

日々の暮らしの中にも、まだまだ自分が見つけられていない
素晴らしいものが眠っていると考えると 明日が楽しく思えてきます。

そんな気持ちを込めて 今回の服たちを作りました。


今回の色味は、
その魅力的な花々をイメージして色を起こしました。

たくさんの花や葉の色を思い浮かべ作った色味が並んでいますので、
いつもよりも多くの色味で溢れています。
楽しげて、軽やかな雰囲気を感じていただきたいです。

また、それぞれの色にはルーツとなった植物がありますので、
もし、お時間があれば、調べてみてください。

ハクサンチドリをイメージした、繊細で落ち着いた色味の fischer’s orchid pink、
チシマアザミを意識した、彩度を落としたエレガントな雰囲気の greyish cirsium purple
レンプクソウの透明感のある儚げな黄緑色の five-faced bishop green
ミミコウモリの葉の、鮮やかなで輝くような緑色を意識した bright parasenecio sproutsなどは特に気に入っています。


素材としては 春夏シーズンですので麻素材を多く使っています。

糸の撚りを強め、サラリとした肌触りを表現したり、
また逆に撚りを緩めてふわりとした優しい風合いを際立たせたり、

またざっくりとガーゼ調に織り上げ、軽やかに仕上げたものもあれば、
細い糸を高密度に織り上げ、張りのある質感に作り上げたものなど、

同じ麻でも、生地によって全く違うものに仕上がっていると思います。
それぞれに美しい表情が見られますので、是非ご注目くださいませ。

それ以外にも、シルクを使い上品でエレガントな光沢や質感を表現したもの、
キュプラやレーヨンなどの落ち感のある再生繊維を使い、美しいドレープ感を作り上げたものなど、
様々な素材を複雑に組み合わせています。


春夏シーズンのものですので、
いつも以上に肌触りや、生地の広がりや分量感、重さを意識し、
細かな組み合わせのバランスを吟味して作り上げました。



幻想的な“花咲く草原”を意識して作り上げた
軽やかで心踊るような今シーズンの服たちを、是非お楽しみください。







スズキタカユキ

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