message – 【2025 spring-summer collection “world with water”】





world with water




小さい頃から 水がある風景に強く惹かれている

自然が多いところで育った為
綺麗な水がある環境が あたり前のように側にあったからだろうか

本能的な理由だけではない 何か精神的な結びつきを感じる


川に船を浮かべ
水の流れに身を任せた時間を過ごした

いつもとは違う時の流れを感じ
いつもと違う目線からの風景を見て

水と 水に生かされているものの存在を 強く感じた


水はそれ自体に形はなく捉えどころがないのだけど
確かに存在していて 力強く
様々なものを 受け入れ 繋ぎ 寄り添ってくれている



水のような服を作りたいと思っている


特別な主張があるわけではないけれど
それでも確かな存在感があり

人が入る隙間があるもの
人が着ることで完成するもの

そして 必要だと感じてもらえるもの



人と服との関係性が 自然で
適度な距離感がありつつも お互いが寄り添っている その姿を美しいと思う




服を作るということは
ほんのほんの少しだけだけれど それを着てくれる人たちの人生に関わることだと思っていて
生きていくことは大変だけど 少し安心できて 少し楽しくて もう少し頑張れる

そんな気持ちにさせてくれる 服がつくれると良いなと思っています






suzuki takayuki



今回のテーマは、“ world with water ” です。
揺蕩う水を、イメージして作り上げました。

幼い頃から、水が近くにある環境に育った為か、
綺麗な水がある環境に、強く惹かれます。


混々と湧き出す泉や、キラキラと光を反射する透き通った沢の水、
田んぼに張られた鏡面のように美しい水の風景など、
幼少期の記憶は、水に関わるものが多く、今でも鮮明に思い出されます。


私たちが、テーマに据えるものは、
光や影、風や大地など、形にならない抽象的なものが比較的多いのですが、

水も、形を持たない、そういったものの一つだと考えています。

ただ、水は、光や風などと比べると、実際にさわった感触も分かりやすいですし、
存在を意識しやすいものだと感じています。


その、流動的でありながら、存在を意識できるということがとても重要で、

自分のルーツの一つである、幼少期の記憶と共に、
今回は、水のそういった要素を形にしたいと考えたのです。


服は、人との距離が非常に近い存在の一つです。

多くの人は、生きていく中で、殆どの時間、服を着ているので、
服は、人にとって、とても精神的に作用するものだと感じています。

だからこそ、私たちが作るものは、
人に寄り添い、優しく包み込んでくれるような、
また、長い期間一緒に過ごしていける、そういったものを目指しています。


服としての個性はあるのですが、
ブランドのイメージを押し付けるものではなく、
出来るだけ、着る人の雰囲気と組み合わさって、素敵な存在感を感じていただけるもの
そういったものを、良い服だと捉えています。

ただ、今回の服たちは、そういった今までの考えに加え、
もう少し、その存在を意識できるようなものに仕上げていきたいと考えました。

その存在を感じることで、自分が一人ではないということを意識できて、
服を着ることで、少しだけ、自信を持てたり、安心して自然体の自分でいられるような、

服が、ほんの少しだけでも、自分の芯の部分を支えてくれるような、そういった感覚。

柔らかく包んでくれるというよりも、
もう少しだけ踏み込んで、背中を押してくれるような服を作りたいと感じました。


その為、服に、少しだけ、“引っかかり”を作りたいなと考え、
素材の特徴、重さや、肌触り、量感など、いつも以上にこだわりました。

オーガンジーや、リネンガーゼといった、毎シーズン使っている特徴的な素材に加え、
いつもよりもしなやかなレーヨン素材、加工や仕上げに工夫をして変化をつけたもの、
強い光沢感のある徹底した管理素材のアセテート素材や、リネン混のデニム素材など、
今までに無い素材も取り入れています。
また、定番アイテムで使っていた素材でも、少し厚みや織り方に変化を付けているものもあります。


身体に、どのくらいの量の生地を乗せるのが心地よいのか?というのは、
永遠の課題ではあるのですが、いつもよりも少し意識してもらう為に、
生地分量を、多めにしたり少なくしたりと、細かな変化をつけています。


それ以外にも、
パターンや構造を見直して、
立体的でエレガントなシルエットや、
動いた時に印象的な生地の広がり等を追求していたり、

また、定番アイテムのサイズ展開を増やしたり、使い勝手を良くしようとした試みを、
少しずつですが始めています。


今回の色展開ですが、

昨年の春夏シーズンでは、少しカラフルで彩やかな雰囲気でしたが、
今回は、白から濃紺へと続く、落ち着いた色展開の、シンプルで大人っぽい印象の展開になっています。

数多くの青色を展開しているのですが、少しグレイッシュで落ち着いた印象の色味が印象的です。
特に、“aqua”と名付けた今シーズンを象徴する色をつけた、薄手のコットンシルク素材のアイテムは、
とてもお勧めです。

この生地をつかったアイテムは、定番アイテムではあるのですが、
今回の“aqua”のお色により、いつもとは違った印象に仕上がっており、私も気に入っています。


その他に特徴的なものですと、中華ボタンを使ったアイテムが目立ちます。

私たちは、できる限りニュートラルな服を作りたいと思っています。
それは、普通だということではなく、
様々な要素が、相反する要素も含め、特別で絶妙なバランスの上で共存していて、
それ故、服自体に強い特徴が有るというものではなく、落ち着いた自然な印象に感じられるものです。

そういったバランスで出来上がった服は、その内包した多くの雰囲気により、
着ていただく方のタイプに合わせて変わって見え、
年齢や体型も越えて、それぞれに似合うポイントが有る服になっています。

そいった服こそが、私たちの目指している服たちになります。

その為、デザインルーツやディティール、シルエットやパターンの構造などを、
様々な時代、地域のものを変則的に組み合わせて作っているのですが、
今回は、その中で中華ボタンを使ったアイテムを2点ほど出させていただきました。

今までも、カシュクールのワンピースや、春夏人気のドーティー、シャルアールパンツなど、
アジアテイストの構造、シルエットを使ったものや、
カディーなどの特徴的な地域の生地を使ったのアイテムはいくつか出してきましたが、

アジアンなものやアフリカンなものを使いつつ、モダンでニュートラルなものに仕上げていくことで、
普遍的なアイテムが作れるのではないかと思っています。

その一環として、今回は中華ボタンを使ったアイテムを作らせていただきました。



実験的な試みをしつつも、
全体としてはシンプルで上品なイメージに仕上げたコレクションです。


水のように、しなやかで流動的、そして、その中に確かな存在を感じられるもの。

着る人に合わせて変化しつつも、
その存在を少し感じることで、日々の生活に必要なものになっていく服たち。


そういったものを目指して作りました。


是非、ご覧ください。





スズキタカユキ

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