message – 【2026-27 autumn-winter “ the quiet growth ”】





the quiet growth




はじめて北の森に踏み込んだとき

季節は 雪が降り積もる前の 本格的な冬が来る直前だった気がしますが


そこは海沿いにある 太古の森で
人の歴史よりも 長い期間 拡大と縮小を繰り返しながら 存在し続けてきた特別な場所でした


そこには 分厚い絨毯が敷かれているように びっしりと苔に覆われた 豊かな大地が広がっていて

すでに マイナスに差し掛かろうとする気温の中
木々の葉が落ち 下草が枯れ 見通しが良くなった深い静寂の森で

美しいその緑色の広がりは 私の心を 強く惹きつけました




他の植物たちに比べ 一際ひっそりと 静寂の中を 生きているような存在


音を立てず 少しずつ 増殖し 定着していくその姿に どこか愛くるしさを感じ

物言わぬ その苔たちが その厳しくも美しい自然の中で 一体何を感じ 何を考えてきたのかと

その懸命に成長していく姿に 意味を見い出し 強く惹かれたのだと思います



静かに 控えめに それでも 確かに存在し

ゆっくりと 長い年月をかけて大地をやさしく覆い 他の生命の苗床になるもの


そういう存在に憧れ 愛おしいと感じています



私たちの作るものたちが、そんな存在になれることを願って 作り続けています




suzuki takayuki






今回のテーマは “ the quiet growth ” 、
“ 静かなる成長 ” です。

直接的なイメージソースは、《 苔 》です。
びっしりと厚く苔に覆われた大地を見た時の
感動と言葉に出来ない不思議な感覚を伝えたく、テーマに沿えました。

様々な種類の苔、そしてその上に複雑に存在する多くの生物、

その、小さな生態系が見せる緻密な姿と、 
一見、均一な絨毯のようにも見える、柔らかでふっくらとした心地良さそうな姿の
両面がとても魅力的で、

また、じっくりと時間をかけて 環境に合わせ少しずつ成長していく姿に、
自分たちが目指す服作りの理想の一つとの共通点を感じています。


複雑に見えて単純な構造や特性を活かしてあり、
単純に見えて複雑に作り込んである、そういうものづくりを意識していますし、

時代や人に合わせ、少しずつ変化し、修正を加え、
より完成度の高いものに作り上げていくことを、心がけています。

また、suzuki takayuki の服を着ることで、自分に少し自信が持てたり、
何か些細ではあっても大切な変化のきっかけを受けたり、
少しだけ明日を頑張っていけるような、そんなことを感じていただけたら、幸せだと感じます。

服は、人との距離が最も近くにあるものの一つですので、精神的に作用することが大きいものだと考えています。
この時代だからこそ、やさしくて、少し安心できるようなものを目指して作りました。


雰囲気としては、少しだけフェミニンで柔らかいシルエットにしています。

縦横のバランスを整え、ほんのり丸みを帯びたものに仕上げたものですとか、
バルーンシルエットなども新しく使っています。
また、いつもの分量感を持たせたギャザーやフレアーも、細かく吟味して調整を入れています。


素材は、今回も麻を多く使いました。

麻は保温力がある素材ですので、
ウールなどと組み合わせると秋冬シーズンにも使い勝手の良いものに仕上がります。

綾織、平織り、ヘリンボン、ガーゼ調と織り方を複雑に変え、
織りの密度を変え、糸の撚りを変え、さらにリネン、ウールの分量を調整し、
加工をして柔らかく仕上げたり、少し毳立たせたりと、
アイテムに合わせて、緻密に調整して使い分けています。

それ以外にも、加工や洗いをかけて、しなやかに、味わい深く仕上げたコーディロイや、
ヴィスコースとリサイクルポリエステルを使った、上品で毛足の長いベルベット、

さらに、通常流通している中では最も細い糸を使用した贅沢なエキストラキッドモヘアを、
シルク糸を芯に巻きつけて作ったものなど、特徴のある素材のものも並びます。

全体的に、ほんの少しだけカジュアル方向に寄せてはいます。
上品さや、フォーマルさを残しつつも、着用し易く、普段着としても使って頂きやすいものをご準備しました。

ダウン並みの軽さと暖かさを兼ね備えた、特殊素材の中綿を使用したものや、
ダッフルコートなどのアイテムは、その絶妙なカジュアル感を感じていただけるアイテムだと思います。


また、定番のアイテムも生地の質感を変え、変化を持たせています。



定番的な安定感の中に、積み重ねた変化を乗せ、
さらにそこに、新しい展開や挑戦を加えた、多重構造のコレクションです。


どうか、ご覧くださいませ。

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